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わが国の行政上の食品由来病原微生物(食中毒細菌、ウィルス、寄生虫)
参照 HACCPシステム実施のための資料集(小久保彌太郎【こくぼやたろう】獣医学博士
社団法人日本食品衛生協会 技術参与)
食中毒細菌:
腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、腸管出血性大腸菌、 その他の病原大腸菌、ぶどう球菌、セレウス菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、コレラ菌赤痢菌、チフス菌、パラチフスA菌、エルシニア・エンテロコリチカ、ナグビブリオ、プレシオモナス、シゲロイデス、その他の細菌(エロモナス、ヒドロフィラ/ソブリア、ビブリオ・フルビアリス、リステリア・モノサイトゲネス等)
ウィルス:
ノロウィルス、その他のウィルス(A型肝炎ウィルス等)
その他:
クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、アニサキス等
腸炎ビブリオ
特徴
ビブリオ属真水で増殖できず、塩分2〜5%でよく発育。
発育がきわめて速い
汚染・感染経路
沿岸海水中に生息。夏期に沿岸で獲れた魚介類・さしみ・加工品、魚介類により汚染された調理器具。発病までの時間・症状
発祥までの時間:平均12時間症状:腹痛、激しい下痢、吐き気、嘔吐、発熱
予防のポイント
- 魚介類を真水で洗浄
- 魚介類を取り扱った調理器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染を防止
- 漁獲から消費まで10℃以下の低温管理
- 冷蔵庫から出したら2時間以内に食べる
- 65℃1分間以上の加熱処理
サルモネラ属菌
特徴
腸内細菌 血清学的に2300種類以上に分類。 乾燥に強い汚染・感染経路
ヒト、家畜の糞便、そ族昆虫に広く分布。主として鶏卵、食肉類とその加工品。淡水魚。糞便に直接・間接的に汚染された多様な食品。発病までの時間・症状
発祥までの時間:8〜48時間(菌種により異なる。)症状:悪心、腹痛、下痢、嘔吐、発熱
予防のポイント
- 生肉調理後の器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染防止
- 卵や生肉は10℃以下(できるだけ4℃以下)の低温管理
- 食肉や生レバーは生食をさけ、75℃1分間以上の加熱調理
カンピロバクター・ジェジェニ/コリ
特徴
大気中で発育できない。酸素3〜15%で発育。30℃以下では発育できない。少量菌で食中毒をおこす。
汚染・感染経路
家畜、家きん、ペットなどあらゆる動物が保菌。食肉とくに鶏肉が関係した多様な食品未消毒の井戸水。発病までの時間・症状
発祥までの時間:平均 2〜3日と長い症状:腹痛、激しい下痢、発熱、嘔吐、筋肉痛、後遺症としてギランバレー症候群
予防のポイント
- 鶏肉調理後の器具、手指は十分洗浄・消毒、乾燥し、二次汚染防止
- 生肉と調理済みの食品は別々に保管
- 75℃で1分間以上の加熱調理
- 井戸水は適確に塩素消毒
病原大腸菌(下痢原性大腸菌)
特徴
腸内細菌発病のしかたにより、6カテゴリーに分類。
そのうち腸管出血性大腸菌(O157など)は三類感染症
汚染・感染経路
ヒト、動物の糞便、とくに腸管出血性大腸菌はウシの 糞便に直接・間接的に二次汚染された多様な食品。子供、高齢者は要注意
発病までの時間・症状
発祥までの時間:12〜72時間(菌種により異なる)症状:下痢、腹痛、発熱、嘔吐、腸管出血性大腸菌O157は溶血性尿毒症で死亡することあり
予防のポイント
- 他の細菌性食中毒と同じに、調理器具、手指からの二次汚染 防止
- 低温管理、加熱調理の励行、とくに牛肉は75℃で1分間以上の加熱
リステリア・モノサイトゲネス
特徴
グラム陽性短桿菌特定の血清型学(1/2a、1/2b、4b)
4℃以下でも発育が遅い
汚染・感染経路
環境(土壌、水、下水 等)、不適切なサイレージ乳・乳製品(特にソフトチーズ 等)、食肉(生・発酵ソーセージ)、野菜、魚介類(くん製品)
発病までの時間・症状
発祥までの時間:2〜3日間〜6週間症状:インフルエンザ様症状、脳炎、脳脊髄膜炎、敗血症、流産、高い死亡率(30〜50%)
予防のポイント
- 冷蔵されたready-to-eat食品は要注意
(特にハイリスクグループ:妊婦、乳児、高齢者、免疫能力の低下した者) - 冷蔵は有効であるが過信は禁物
- 通常の加熱調理の励行
黄色ブドウ球菌
特徴
菌体はブドウの房状。冷蔵温度域では発育できない。エンテロトキシンという毒素を産生し、毒素は100℃で壊れない(菌は75℃1分以上で死滅)
汚染・感染経路
ヒト、動物の皮膚、粘膜に広く分布おにぎり等の穀類加工品、弁当、調理パン、菓子類。
発病までの時間・症状
発祥までの時間:1〜5時間(平均 3時間)症状:吐き気、嘔吐、腹痛(下痢)
予防のポイント
- 手洗いの励行(個人衛生の徹底)。とくに手指に傷や化膿創のある人は調理取り扱いの禁止
- 低温管理、低温管理できない食品は早く食べる
ウェルシュ菌
特徴
クロストリジウム属菌。芽胞を形成し通常の加熱調理によっても生残。酸素があると発育できない。
汚染・感染経路
ヒト、動物の糞便。土壌。食肉、魚介類、野菜を使用 した加熱調理食品。とくに大量調理されたカレー、弁当、スープなど発病までの時間・症状
発祥までの時間:8〜12時間症状:通常は軽症で1日で回復
予防のポイント
- 食肉、魚介類、野菜などの調理では十分熱を通す
- 加熱調理後は直ちに短時間で冷却後低温保存
- とくに弁当・仕出しなどの大量調理は要注意
セレウス菌
特徴
バチルス属菌 芽胞を形成し通常の加熱調理によっても生残。 嘔吐を主徴とする菌と下痢を主徴とする菌がある (わが国では嘔吐型が主)汚染・感染経路
土壌などの自然界に広く分布。嘔吐型は焼き飯、ピラフなどの米飯類、パスタなどのめん類。下痢型は食肉などのスープ類。
発病までの時間・症状
発祥までの時間:嘔吐型は1〜5時間下痢型は8〜15時間
症状:嘔吐型は黄色ブドウ球菌食中毒に類似
下痢型はウエルシュ菌食中毒に類似
予防のポイント
- 加熱調理した食品は長時間室温放置せず、なるべく早く食べるか、冷蔵保存
- 一度に大量の米飯やめん類を調理しない
ボツリヌス菌
特徴
グラム陽性胞子形成菌嫌気静菌、致死率が極めて高い。 菌体外でたんぱく毒素」を産生。この毒素が極めて強い毒力を示す。 毒素自体は、80℃で20分、また100℃で1〜2分の加熱で不活化される。汚染・感染経路
土壌などの自然界に広く分布、河川や海の底の泥から検出されることが多く、農産物、魚介類、食肉などあらゆる食品原材料は、本菌で汚染される可能性が高く、香辛料、蜂蜜、砂糖などからも検出されている。発病までの時間・症状
発祥までの時間:毒素摂取後8〜36時間後に発症(早い場合は2時間と言うこともある)症状:悪心、嘔吐、蹴りの消化器症状あり、呼吸失調で、死に至ることが多い
予防のポイント
- 120℃で4分又は100℃で360分以上の加熱による芽胞の完全殺菌。
- 芽胞の発芽、菌の増殖抑制(pH4.6以下、水分活性0.94以下、温度33℃以下)
- 5℃以下の温度では毒素を出せないので、低温管理が需要になる。
ノロウィルス(SRSV)
特徴
極めて小さく、いが栗状の球形ヒトの腸管内でのみ増殖
汚染・感染経路
ヒト自身の糞便。河口付近で養殖されたカキ、ハマグリなどの二枚貝。ヒトからヒトへの感染がある。発生は冬期に多い(現在は年中発生)
発病までの時間・症状
発祥までの時間:24〜48時間症状:吐き気、嘔吐、激しい下痢、腹痛、頭痛
予防のポイント
- 調理器具、手指の十分な洗浄・消毒、 二次汚染の防止。とくに個人衛生の徹底
- 芽胞の発芽、菌の増殖抑制(pH4.6以下、水分活性0.94以下、温度33℃以下)
- 食材の十分な加熱処理(85℃で1分以上)